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ススムのサラリーマン人生最高でーす!!/エッセー&小説

京王電鉄フォーエバー!!(1)

「人間は、自分が解決できることしか悩まない」とカール・マルクスは言った。

 なるほど、スーパーマンにあこがれている人は見たことがあるけど、「なんでおれはスーパーマンみたいに空を飛べないんだ!」などと悩んでいる人を見たことはない。「なんでおれは神になれないんだ!」という人も見たことがない。悩むだけ時間の無駄ということを人はきちんとわきまえている。悩んだ時間だけ己の血肉になる期待があるからこそ人は悩むでのある。わたしも無論、空を飛べないことにも、神になれないことにもなんらコンプレックスはないし、そもそもそんな欲求すらない。わたしとて不可能なことは悩まない。では、何を悩んでいるか?正直に言おう、なぜ会社はわたしを雇おうとしないのか? 

 その日の午後3時32分、わたしは聖蹟桜ヶ丘という普段ならまず訪れないであろう東京郊外のまちで、厚い白塗りの壁に覆われた重厚なたたずまいのビルの前に立ち尽くしていた。「ほう」わたしはビルの正面に掲げられたサインを見上げながら心の中で感嘆のつぶやきを発した。そこには、「京王電鉄株式会社」とある。鏡のようにピカピカに光るその高級感、歴史を感じさせるその書体のかたちの美しさに心を打たれたのである。同時に、まもなく朝の出勤のたびにこのサインの下をくぐるのであるなあ、などとしみじみと思ったりもしていたのである。「よし」心の中で気合を入れ、入り口目指して歩を進める。その意気をあざわらうようにドアは恬としてあこうとはしない。よく見ると、ドアの内側に立て札があって、「午前の説明会は終了しました。次回説明会は午後4時からです。午後3時50分から受付を開始します。」とある。わたしはひとつ舌打ちをして、きびすを返し、受付開始までの18分という時間をつぶさなくてはならなくなった。ここで気を塞いでいては選考に支障をきたす。この機会に、聖蹟桜ヶ丘というまちを見てやろうじゃないか、と思った。歩きながら、整体院があったり、フィリピンパブがあったり、といった別にどうということのないことにいちいち新鮮な発見をしたような気になる。勤務のあとに整体いったり、フィリピンパブでパブ嬢と戯れたりするのかもしれないなあ、などと頭の中をばら色に染めていたのである。しかし、ものの10分もすると、まち歩きにも飽きる。何よりも強烈な睡魔に倒れそうになる。眠気と退屈感を晴らすために、目の前にある「啓文堂」という本屋に駆け込む。入り口に詰まれた新刊の中から、『東大合格生のノートはかならず美しい』という書物を手にとってパラパラと見る。ページの随所に東大合格者たちのノートが掲げられている。確かにそれはきれいだ。しかし、だからなんだというのか。わたしはそれを見ながら、授業中に授業そっちのけで仕上げた渾身のパラパラ漫画や、学生ならでは卑猥の妄想の数々が作り出した落書きやしみの類がちりばめられたノートこそ真に美しいのではないかと思った。そのとき、ひとりの女性がわたしの横をさっそうと歩き過ぎた。時間だ!そう思って時計を見ると、はたせるかな、3時50分。リクルートスーツと思しき服装に身を包んだその女性はこれからわたしが向かう京王電鉄株式会社の説明会の参加者であろうと、察知したのである。『東大合格生のノートはかならず美しい/太田 あや』をそっと書棚に戻し、「啓文堂」を出て、その女性を尾行するように京王電鉄株式会社のビルに向かった。すでにエントランスでは、大勢のリクルートスーツ姿の人々がビルに吸い込まれるように入っていく。ドアのところでは、重役と思しき人物が笑顔でわれわれをビル内に導いている。この人がわたしの上司になって、勤務が終わるたびに、「お疲れ様でした」などと笑顔で挨拶を交わすのかもしれないなどと想像しながら、かけられた挨拶に「こんにちは」と力ない挨拶を返した。睡魔が徐々に全身のエネルギーを吸い上げはじめていた。矢印に従って、われわれ応募者は蟻の行列のように会場へと向かう。みんなで一方向に向かっていると、何か横道にそれたくなるという悪癖がわたしにはある。サラリーマンとしてあるまじき習性とは思いながら、そのときも、列からそれ、トイレに駆け込む。そこには先客がいて、鏡の前で頭髪などを整えているようであった。そんなことしても大差なかろう、などと心の中で罵声を浴びせながら、横目でその人物を見ると、鏡の中で目が合ったのでとっさに目をそらせた。用を済ませ、鏡の前で頭髪などを整えていると、リクルートスーツの男が入ってきたのでちらと見ると、鏡の中で目があったので、とっさに目をそらせた。トイレを出て、いざ、会場を目指して階段を上がっていく。どこまで上がるんだというくらいあがると、ようやく4階にあがったところで、矢印は水平方向を指す。薄暗い廊下の向こうには、まばゆい光を放つ会議室。入り口の前では、若手社員たちが、満面の笑顔で「こんにちは!」と挨拶をかけてくる。わたしは、会議室の入り口で、ひとりの若手社員から「こんにちは!」という威勢のいい声とともに、説明会の資料を渡されたとき「こんにちは」と挨拶し返したが、目があった瞬間とっさに目をそらせた。

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