ホームページ制作請負の打ち合わせのため電車で東京へ向かっているとき、ケータイが鳴った。
クライアントの中国人のチンさんからのTELで、どうしても手が離せない用事ができたから、打ち合わせ場所を浅草に変えて欲しいとのこと。
しぶしぶ電車を乗り継ぎ、浅草へ。
指定された雷門の前に着くと、そこは、多くの人々でごった返している。
私はすかさずデジカメを取り出し、写真撮影。
昼間に雷門を見たのはそれが初めてなのだった。
夜、浅草での飲み会の帰りに、ふらつく足取りで月夜に浮かぶ五重塔を過ぎ、誰もいない仲見世を歩いていった先に、妙に黒々とした物体のぶら下がった出口があるなあと思った、その出口こそが初めて見た雷門であった。
チンさんに到着のTELを入れると、そのまままっすぐ、200メートルぐらい先に修復中の浅草寺があるからその裏手に来いとのこと。
仲見世の賑わいを騒音に、行きかう人々を障害物に、一人逆走するように、浅草寺目指す。
裏手に回ると、チンさんが手を振っている。
そこは次の日に行われる予定の浅草サンバカーニバルの山車が並ぶ。
チンさんはそこのサンバチームに衣装を納品しているのである。
チンさんの用事が済むと、食事をしながら打ち合わせ。
場所は来る時に目をつけておいた、「三定」という天ぷら屋である。
雷門のすぐ近くにある、いかにも老舗感を漂わせた店。
われわれは2階の座敷で一息。
昨晩は歌舞伎町で朝から飲んでいて寝ていないと疲労を口にするチンさんは、その言葉とは裏腹に、自らのビジネスの成功目掛けて眼光らんらんとさせている。
私は、天丼の並を注文、チンさんは天ざる。
出てきた天丼のふたを取ると、しっかりとたれのしみこんだ具材がごはんを覆う。
ふわっと立ち上がる湯気、たれの芳香。
チンさんの天ざるが届く間も惜しんで、私はお先に、天丼に箸を伸ばす。
甘くもなく、辛くもなく、塩っぽくもなく、どちらかというとさっぱりとして味だが、しかし、しっかりと深みのあるたれが、具材とご飯をひとつに包み込んでいる。
目の前ではチンさんが早速「ビジネスの話」を始める。
ホームページ制作にはお金をかけられないという趣旨である。
それは不味い。
天丼はうまい。
ひと口ひと口を大事に、天丼を堪能。
本当ならもっと美味しくいただけただろう、
「ビジネスの話」という不味い付けあわせがなければ。
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